やや時代を遡り、ふたりが発ってより二五年。地球ではアルゴノート計画の継続についてさまざまな意見が交わされていた。

「三度に渡る有人探査計画はすべて失敗。二度目と三度目は航行中のトラブルで、さいわい四年かけて帰投には成功しましたが、最初のふたりにいたっては消息不明です。帰投予定日からすでに一年も経過している。いい加減、予算の無駄遣いを諦めるころでは」

「しかし通信を見るに、ふたりは現在も活動中なのです」

「八年前の情報でしょう。現在どうであるかはわからない」

「分析官の結論は、惑星全体がある種のウラシマ効果のような状態にあるということです。八年前、ふたりはおよそ三七、八歳のはずです。しかし映像では二〇代中盤に見える」

「しかしいくら計算しても、そんなことは理論的にありえない。あの質量の天体でそれほどのウラシマ効果が発生することは、理論的に不可能なのです。もしそんなことがありえるとするならば、物理法則が全宇宙に渡り一様に広がっていないことになってしまう。宇宙原理を棄却することはわたしにはできません」