地球から発って約三年。
セカンドアース計画の初期の開発でテラフォーミングが進んだ惑星は、古代の地球のように植物が巨大化し、酸素過多の状態にあった。
ふたりは宇宙服を着て惑星に上陸し、大気の組成の理論値と観測値の差を比べた。
「酸素分圧が高すぎるわね。この大気の組成だと宇宙服を脱ぐとあっという間に中毒症状を起こして意識を失うわ。まずは動物を繁殖させないといけないわね」
アルゴノート号には多種多様な種の遺伝子のサンプルがあった。植物は種子を直接運べばよい種もあるが、多くの動物はそうではない。それに人間の事情として生態系をできるだけ制御したいというものがあった。
ふたりは地形を見ていくつかの場所を選び、そこに旗を立てた。
「立地がいい場所をいつつ選んだわ。この旗を立てた場所に街をつくりましょう。わたしは大気の組成を変えるために動物を繁殖させる。あなたには自給自足するための環境を整えてほしいの」
「オーケー。船のシステムも、さいわいあと五年はもつ。余裕のあるスケジュールだな」
ふたりはおよそ二年余りかけて、人間が宇宙服なしで活動できるまで観測値を慎重に調整し、家畜や農作物を育ててふたりの男女が自給自足できる水準まで惑星を開拓した。
最初に立てたいつつの旗は、それぞれが役割をもった。最初に旗が立てられた一番旗はいまダムとなり水分を安定して得るために欠かせないところとなっていた。二番旗は広大な田園、三番旗は果樹園。四番旗では家畜の放牧地。そして五番旗に、ふたりが住む家屋が建てられた。
フィフス・フラグを中心に、ファーストからフォースまではその周辺を覆うようにあり、ふたりは最初、毎日そこへ足繁く通い、律義にその日の糧を集めていた。
さらに一年ほどかけ、ふたりは水道を整備し、トロッコを開発した。それまで水は川から汲んでいたところを、ふたりがフィフス・フラグで蛇口をひねれば水がでるし、機械を操作すれば、作物や柑橘類がトロッコで運ばれてくるところまでを機械化したのだ。