八年もの航海ではいろいろなことがあった。
船は高速に航海しつつ人間が最大限快適に生きることができるよう、いろいろな設備があった。
それでも若い男女がふたりで、それもほぼ密着状態で何年も過ごすということは、複数の意味で危ないことだった。
簡易的な仕切りをおろすことで視覚的な遮断はできるし防音仕様にもなっているもののそういう遮断をすること自体裏でなにかしていることを知らせることにもなってしまう。本部との通信を一時的に停止することもできるものの、やはりそれ自体、知られたくないことをしているということを知らせる合図にもなってしまう。
スヴェトラーナにとって、そういうことをしていると知られること自体恥ずかしいことだった。
数ヶ月後、代わり映えしない毎日に、彼女は考えていた。
(八年かあ。惑星に到着するとき、わたしは二九歳。隣にいるのは好きな男性)
ふたりはなんだかんだ、まだいろいろと初々しいところがあった。
(変なことしないでって言ったこと、真に受けているのかな)
彼女はジェイコブを横目に見ていた。
(それとも魅力がないのかな……)
彼女は両手で胸をさすった。
宇宙船に乗るには都合のよい、平たい壁。
彼女はいきなり本部との通信を切り、明かりを消した。
驚くジェイコブ。
船内は星空からの光のみで照らされていた。
スヴェトラーナはかれに飛びつき、かれの首に手をまわしてキスをした。
意志を示すための、動き。
「ちょ」
「なんで、しないの」
「なんでって」
「もうずっとふたりきりなのよ。だったら……」
「……」
今度はジェイコブが彼女の両手首を片手で握り、彼女を押し倒す。
「止まらないからな」